Appleは2026年10月15日、同日リリースのMLX最新版とRDMA over Thunderboltを使い、4台のMac Studio(M5 Ultra)で816BパラメータのMoEモデル「Muse Spark Open」を36 tokens/second超で生成できると公開しました。MLXはAppleの機械学習研究チームが開発する、Appleシリコン向けの配列計算フレームワークです。
評価モデルと単一Mac Studioの性能
AppleはMLX LMのmlx_lm.benchmarkで3モデルを計測し、M5 Ultraと前世代M3 Ultraを比較しました。コンテキスト長は8,192と65,536 tokensです。
| モデル | 総パラメータ | 活性パラメータ | ネイティブ精度 | 評価精度 |
|---|---|---|---|---|
| Muse Spark Open | 816B | 42B | BF16 | NVFP4 |
| Mistral Medium 3.5 | 128B | 128B | FP8 | FP8 |
| Qwen 3.8 | 27B | 27B | BF16 | BF16 |
Qwen 3.8とMistral Medium 3.5は512GBの単一Mac Studioに収まり、65,536 tokens時のRAM使用量はそれぞれ最大68GBと158GBです。
| 項目 | M3 Ultra | M5 Ultra |
|---|---|---|
| ユニファイドメモリ帯域幅 | 819 GB/s | 1.2 TB/s |
| TTFT(M3 Ultra比) | 1.0× | 最大4.6× |
| 生成速度(M3 Ultra比) | 1.0× | 1.6× |
| ピーク消費電力 | 約200W | 約300W |
Appleは、TTFTは計算律速でM5世代のGPU Neural Acceleratorが効き、生成速度はメモリ帯域律速だと説明しています。
Muse Spark Openに分散が必要な理由
Muse Spark OpenはBF16ではパラメータだけで1.6TB超のRAMを要します。NVFP4の4-bit量子化で約493GBまで下がりますが、中間計算用メモリを加えると単一マシンには収まりません。Appleは2台のパイプライン並列、2台と4台のテンソル並列で性能を示し、4台テンソル並列で36 tokens/second超(NVFP4、コンテキスト長8,192 tokens)に達しました。
試し方と要件
- 前提: macOS 26.2のThunderbolt 5向け低レイテンシRDMAドライバと、MLX v0.30.1以降の通信コレクティブ
jaccl - 接続: 2台構成は2本のThunderboltケーブルで接続(リンク帯域を倍にするため)。4台構成は各Mac Studio間を2本ずつピアツーピア接続
- 単一ノードのベンチマーク:
mlx_lm.benchmark --model Qwen/Qwen3.8-27B -p 8192 -g 128 -b 1 - パイプライン並列:
mlx.launch --hostfile hostfile.json --backend jaccl -- env MLX_METAL_FAST_SYNCH=1 -- mlx_lm.benchmark --model mistralai/Mistral-Medium-3.5-128B -p 8192 -g 128 -b 1 --prefill-step-size 8192 --pipeline - テンソル並列:
mlx.launch --hostfile hostfile.json --backend jaccl -- env MLX_METAL_FAST_SYNCH=1 -- mlx_lm.benchmark --model meta-models/Muse-Spark-Open-816B-A42B-NVFP4 -p 8192 -g 128 -b 1
--backend jacclはRDMA Thunderboltドライバのバックエンドを指定し、MLX_METAL_FAST_SYNCH=1は実験的な高速CPU-GPU同期を有効にします。
並列化方式の違い
パイプライン並列はモデルを深さ方向に分割し、少ないコード変更で実装できます。decode速度は単一マシンとほぼ同じですが、65,536 tokensではコンテキストを8,192 tokensのチャンクに分けて重ねて処理するため、prefillが単一ノード比で最大約1.8倍速くなりました。テンソル並列は幅方向に分割して層ごとの計算を並列化し、推論速度を上げられる一方、トークンと層ごとに小さな通信が多発するため、Thunderbolt RDMAのような低レイテンシ通信が前提になるとAppleは述べています。

まだコメントはありません。