AMD ROCm Blogsは2026年10月14日、AMD Instinct MI300Xを8基搭載した単一ノードで、744B総パラメータのMoEモデルGLM-5.3-FP8をDP8+EP8(DEP)構成で提供する検証済みのサービング手順を公開しました。96K-in / 32K-out、最大同時実行数128の条件で、DP8+EP8の出力スループットはTP=8より147%高い結果でした。
GLMはZ.aiが開発するAIモデルのファミリーで、AMD InstinctはAMDのデータセンター向けアクセラレーター製品群です。記事の執筆者はPradeep Sakhamoori、Mohit Deopujari、Janet Tseng、Eliot Liの4名です。
何が新しいか
既定のテンソル並列(TP)は全レイヤーを8 GPUに分割するため、長文脈・高同時実行ではデコードの各ステップがテンソル集団通信になり、その通信コストがシーケンス長とともに増えると記事は説明しています。コーディングなどのエージェント的ワークロードを代表する96K/32K条件で、TP=8がボトルネックになったことが本手順の動機です。
DP8+EP8では各GPUが独立したデータ並列ランクとなり、独自のリクエストストリームとlatent KV cacheを持ちます。256個のルーテッドエキスパートは1 GPUあたり32個ずつ分散し、テンソル並列は無効化します。MLAは各ランク内で完結して実行され、エキスパート間のall-to-all通信はノード内XGMIに限定されます。アテンション、latent KV cache、共有エキスパート、埋め込みは各ランクに複製します。
仕様・数値
GLM-5.3-FP8は78ブロックで構成され、トークンごとに256個中8個のルーテッドエキスパートと常時動作する共有エキスパート1個を使います。アテンションはMulti-head Latent Attention(kv_lora_rank = 512)とDeepSeek Sparse Attention(DSA)の組み合わせで、DSAのインデクサーはMLAのKV cacheとは別に層ごとのキャッシュを持つため、HBM計画では両方を考慮する必要があります。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| GPU | MI300X ×8(GPUあたり192 GB HBM3、合計1,536 GB) |
| GPUあたりのエキスパート | 32 routed experts |
| サービングウィンドウ | --max-model-len 202752 |
| GPUメモリ使用率 | --gpu-memory-utilization 0.9 |
| ベンチマーク条件 | 最大同時実行数128、プロンプト数128 |
| 96K/32K | DP8+EP8がTP=8比で出力スループット147%高 |
| 8K/1K | TP=8の方が高速 |
ネイティブのrope長は1,048,576 tokensですが、DEPではKV cacheがランクごとに置かれるため、コンテキスト長はGPU単位のHBM予算になります。202,752 tokensは、起動し、初回のコールドJITコンパイル(30〜45分)を通過し、128本の同時シーケンスの余地を残せたウィンドウです。記事は1M-tokenのDEP構成を公開しておらず、--max-model-lenを上げる場合はHBM使用量と同時実行数を注意深く監視するよう述べています。
要件と試し方
- ハードウェア: MI300X ×8、全GPUを空けておく
- ホスト: ROCm 7.2.x、Docker 20.10+、
DOCKER_BUILDKIT=1、ユーザーをvideoとrenderグループに追加 - モデル: 約756 GB(141個のFP8 safetensors shard)。Hugging Faceで
zai-org/GLM-5.3のライセンスを受諾 - キャッシュ: 少なくとも10 GBのJITキャッシュボリュームを再起動間で保持
- ソフトウェア: vLLM
v0.28.0、ROCm 7.2.3、AITER、V2 model runner
重みの取得にはpip install -U huggingface_hubのあと、hf download zai-org/GLM-5.3 --local-dir /path/to/glm-5.3-fp8をHF_TOKEN付きで実行します。起動時の主要フラグは--tensor-parallel-size 1 --data-parallel-size 8 --enable-expert-parallelです。
Dockerfileでは、執筆時点でレビュー中だったAITERの2つの修正を適用します。PR#4365はgfx942でnhead == 64(DP / TP=1)の場合にFP8 MLAデコードカーネルで起きるGPUメモリフォールトを防ぎます(TP=8はnhead=8のため該当しません)。PR#5563は公開ベースイメージでのコールドJITの__halfコンパイル失敗を修正します。パッチのアンカーが見つからない場合、ビルドはエラーで停止します。記事には推論とツール呼び出しの機能検証コマンド、vllm bench serveによる比較手順も含まれています。

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