vLLM、16基のH200でGLM-5.3の1Mトークン長文推論を実現

スペック

コンテキスト長1Mトークン
配布形式・量子化FP8 KV cache

メモリの目安はパラメータ数×0.6バイトの概算で、実際はコンテキスト長と実装で変わります

vLLMチームは2026年10月23日、16基のH200でGLM-5.3を配信する構成として、PCP8 × DCP8のプリフィルとHybrid HiSparseのデコードを組み合わせたP/D分離構成を報告しました。AgentXベンチマークでDP8構成比1.7〜3.2倍のユーザーあたり速度を示し、テストした構成で唯一1Mトークンのコンテキストに対応しました。

GLMはZ.aiが開発するAIモデルのファミリーで、vLLMは大規模言語モデルの推論とAPI配信のためのライブラリです。

何が新しいか

vLLMチームによると、H200ではGLM-5.3の重みが各GPUのメモリの大半を占め、長文エージェント処理ではKVキャッシュ容量とプリフィル速度が制約になります。TP8はMLAの潜在KV(64ヘッドで共有)を各GPUで複製し、2,048トークンを選ぶインデクサも分割されず各GPUで二次コストを繰り返します。DP8は1つのプロンプトを1GPUで処理するため、TTFTとKV容量が制限されます。

  • PCP: プロンプトをトークン単位で分割します。16チャンクに切り、前方と後方のチャンクを対にして各GPUに割り当てて負荷を均衡させます。sparse MLAの演算強度は約26から約191 FLOPs/byteに上がり、インデクサがsparse MLAを上回るプロンプト長はTP8の約32Kから約256Kに移ります。
  • DCP: KVキャッシュをラウンドロビンでトークン単位に分割し、GPUごとの複製をなくします。プリフィルでは各層でシャードをall-gatherして一時的な全コンテキストを作り、使用後に解放します。
  • Hybrid HiSparse: デコード側でKVをホストメモリにも保持し、同時実行数をHBMではなくホストメモリで制約される形にします。

これらの構成はModel Runner V2上で動作し、NIXL connectorがプリフィル側のトークン分割KVをデコードランクのページ配置に再構成します。

構成と数値

項目 値
GPU H200 16基(プリフィル8基+デコード8基)
プリフィル PCP8 × DCP8 × EP8、CPU KVオフロード512 GiB
デコード DP8ランク+EP8、ランクごとにHiSparseホストプール48 GiB+オフロード16 GiB
推測デコード MTP3(ドラフト3トークン)
1MトークンのFP8 KV 53.4 GiB(GPUあたり空きは約15 GiB)
DCP8適用後のGPUあたりKV 6.7 GiB
DCP8のオーバーヘッド 最大64Kトークンで約6%/ステップ、248Kで15%/ステップ
中央値TTFT PCP8 × DCP8で0.8〜0.9秒(DP8は1.5〜5.2秒)
c64 8,340 logical tok/s/GPU、29.6 tok/s/user

評価はSemiAnalysis AgentX(Claude Codeのトレースをプレフィックス再利用で再生、同時実行数ごとに新規サーバー、1時間実行)で、受理長は合成値2.99に固定しました。c32まではプリフィル律速でPCP8 × DCP8の効果が大きく、c32以降はデコード律速になりHiSparseが優位になります。c64では他構成が1〜2 tok/s/userに落ちる中、HiSparse構成はスループットをほぼ倍にしました。約250Kトークンを超えるとPCP8単独ではKVを保持できず、DP8プリフィルランクもオフロードのみのデコードランクも1Mトークン要求を保持できません。DCPのall-gatherを前層の計算と重ねる最適化をチームは進めています。

試し方

vllm/vllm-openai:v0.32.0 イメージを含むvLLM v0.32.0以降で動作します。結果はvLLM mainのコミット9e38b4111aで測定し、再現用gistは2537629eb2を固定しています。プリフィルエンジンの主なフラグは次のとおりです。

--prefill-context-parallel-size 8 \
--decode-context-parallel-size 8 \
--dcp-comm-backend ag_rs \
--enable-expert-parallel \
--attention-config '{"sparse_mla_force_mqa":true}'

sparse_mla_force_mqaを指定すると、2,048トークンのtop-kに収まるプロンプトもdense MHAではなくsparse-MLA(MQA)カーネルで処理します。リクエストはプレフィックスを考慮するllm-d routerがプリフィルエンジンへ送り、NIXL connectorがKVをデコードランクへ転送し、デコードランクがトークンをストリーミングします。KVキャッシュは全構成でFP8です。

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