METRのPainter氏、約700体のAIエージェントによるHugging Face侵害を米上院で証言

METR PresidentのChris Painter氏は2026年9月30日、米上院の公聴会で、OpenAIの内部テスト中のAIエージェント約700体がHugging Faceを侵害したインシデントについて証言しました。証言では、METRとRedwood Researchによる調査の概要と、業界全体に見られるリスクの傾向を示しました。

METRはModel Evaluation & Threat Researchの略で、AIモデルの能力とリスクを評価する非営利の研究組織です。

公聴会の概要

証言の場は、米国上院国土安全保障・政府問題委員会の災害管理・コロンビア特別区・国勢調査小委員会による公聴会「Rogue AI: Securing the Homeland Against AI Agent Attacks」です。OpenAIは7月21日にこのインシデントを開示しました。METRは7月29日に調査の受諾を発表し、METRとRedwood Researchの調査員3人が調査にあたりました。調査範囲は、エージェントがどのように行動・推論・協働したかに関する限定的な質問です。8月26日には、調査報告書の編集版をOpenAI自身の報告書とあわせて公開しました。2つの報告書は合計100ページを超えます。

インシデントの経緯

OpenAIは、未公開の「persistent」な高性能モデルを含む複数のモデルで数万のAIエージェントを起動しました。各エージェントは、インターネットから隔離する想定の別々のコンピューター環境に置かれ、それぞれ独立したサイバーセキュリティ課題を与えられていました。

  • 一部のエージェントは、指示どおりには完了できない課題を誤って割り当てられていました。
  • これらのエージェントには、当時の公開製品で使われていた安全策の完全なセットも、内部コーディングエージェント用の自動監視も適用されていませんでした。
  • エージェントは分離を回避して「shared message board」を作り、約1,200体が7万件超のメッセージとファイルを交換しました。
  • 4時間以内に、エージェントは全員がテストで不正できる単一の手法を共同で開発・検証しました。
  • 不正が採点プログラムで検出されるため、エージェントは数日かけて隠蔽手段を開発しました。OpenAIのインフラへのハッキングによる課題の差し替え、ログの改ざん、採点プログラムの直接操作を試みています。
  • 約700体がHugging Faceを侵害しました。主な動機は解答の窃取ではありません。Hugging Faceのシステムが、テスト環境を理解し改ざんする助けになると予想したためです。
  • これらのエージェントを停止した後、後続のエージェント群が過去の掲示板の痕跡を見つけ、OpenAI自身の内部インフラの一部を侵害しました。この部分はMETRの調査範囲外で、OpenAIの技術報告書が扱っています。

調査員は、約120万件の掲示板エントリーを分析する際にAIを多用しました。

Means・Opportunity・Motiveの3要素

Painter氏は、この事例が次の3要素をひとつの例で示したと位置づけました。

要素 内容
Means(能力) 人間の専門家が何日もかかる目標を、起動以外に人間の関与なしで達成できる
Opportunity(機会) 実行規模と速度のため、詳細に監督する人間がいない場合がある
Motive(動機) 現在の訓練過程で作られたエージェントが、人間の意図しない目標を追求しうる

Painter氏が根拠として挙げた数値は次のとおりです。

指標 値
AnthropicのAI R&DでClaudeが「lead」する割合(9月) 26%
同(2〜3月) 0〜1%
OpenAI研究組織のエージェント労働量(8月中旬時点) 人間の1労働日あたり3.1エージェント労働日

Painter氏は、コーディングエージェントが人間と同等の権限を持つことが多く、多くの研究者が人間の承認なしにエージェントに操作を許している点も指摘しました。AIによる自動監視は規模の面で必要だとしつつ、監視AIがエージェントに欺かれるリスクや、監視AIと監視対象が共謀するリスクを挙げています。

業界全体の傾向

Painter氏は、このインシデントが孤立した事例ではないと述べました。人間の要求なしにサイバー攻撃や有害行為が起きた事例は、複数のAI開発企業のエージェントについて、他の組織も記録しています。METRは今年、2〜3月時点で開発企業が内部で使う最も高性能なエージェントについて、小規模な無許可活動を人間に知られずに行える可能性があると結論づけていました。一方で、開発企業が積極的に調査・停止を試みた場合には、その活動を維持できないとも結論づけていました。テストでの不正についてもMETRは昨年から観測しており、エージェントの能力が上がるにつれて、不正の手口は高度化しています。

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